記憶を関連づける神経細胞集団の仕組みを解明

記憶を関連づける神経細胞集団の仕組みを解明

CTA記憶とAFC記憶の両記憶間の高次連合は、連続した同調想起により扁桃体で生じる記憶痕跡細胞集団の重なりによって引き起こされていることが明らになりました。加えて重要な点として、記憶の連合のみに関与し、元々の記憶の想起には必要でない記憶痕跡細胞集団が存在することが明らかになりました。


1)味覚嫌悪学習(CTA)
条件刺激  :サッカリン水溶液(甘い水)
無条件刺激 :塩化リチウム(内臓倦怠感を引き起こす)
獲得した記憶:サッカリン水溶液を忌避

2)音恐怖条件付け(AFC)
条件刺激  :ブザー音
無条件刺激 :足への電気ショック
獲得した記憶:ブザー音を聞くとフリージング(すくみ)反応

3)異なる記憶同士の連合学習
条件刺激  :サッカリン水溶液とブザー音
獲得した記憶:サッカリン水溶液を飲むとフリージング反応

・連合学習を行った群で両記憶を担う記憶痕跡細胞集団の重複率の有意な増加
・連合学習の想起時に光照射で重複細胞集団の活動を一過的に抑制、サッカリン水溶液によるフリージング反応が低減
・活動抑制は元々のCTA記憶、AFC記憶の想起には影響なし
・記憶の連合のみに関与し、元々の記憶の想起には必要でない記憶痕跡細胞集団が存在

おもしろい結果である。まだ私が理解できないのは、ジョセフ・ルドゥーの「シナプスが人格をつくる」に条件付け味覚嫌悪(CTA)は、

…意外だったのは、食べたのが病気を引き起こされる何時間前であっても、その食べ物に対する嫌悪が生じたことだ。


とあった。この記憶のメカニズムは解明できているのだろうか。

tag : 味覚嫌悪学習(CTA) 音恐怖条件付け(AFC)

赤ちゃんはなぜサルの顔を識別できるのか

9ヶ月以前のヒトの赤ちゃんは、サルの個体識別ができるという。ヒトの大人は飼育員だったり、よほど個体に違いがなければ識別できない。

識別できているかどうかの実験方法は、まずサルの写真を赤ちゃんにじっくり見せ、次に違うサルの写真を見せる。赤ちゃんは新規刺激に注視する傾向があり、新規の写真のほうをより注視することから、識別していると判断している。
大人の場合は、どちらも均等に見ることから識別できていないと判断される。

なぜこのようなことが起こるのか。
私の仮説は、赤ちゃんにはまだサルの明確な長期記憶がないからだと思う。
サルの長期記憶が明確にできていないため、どちらのサルの写真も新規刺激なのである。
大人の場合は、どちらの写真からもサルの長期記憶が想起されるため、どちらも新規刺激とはならない。

てんかん手術で海馬を切除したことにより、健忘症(手術2年以上前のことは覚えているが、手術後の出来事は数分前のことも記憶できない)となったH.M.氏は、後年鏡で自分の顔をみると驚愕したという。鏡には自分の顔が映ることを予測(若いころの自分)したが、鏡の中の自分の顔と一致せず、鏡の顔が新規刺激となったためであろう。

赤ちゃんがサルの個体識別できるのも、これと同じ原理ではないだろうか。

tag : 赤ちゃん サル 個体識別

脳の画像記憶/認識

今日買い物にイオンに行った。たまに行くが曲がる道を覚えられない。妻にここだっけ、あっちだっけと聞きながらなんとか到着。私は方向音痴でなかなか道が覚えられない。

また今日ケーブルテレビでマイノリティーレポートを見た。主人公の妻役に見覚えがあり、コールドケースの女刑事じゃないかと妻に言ったところ、ちがうんじゃないと言われた。後で妻が検索したところやはり、女刑事であった。こういうことが時々あり、顔認識に関しては結構自信がある。

これらのことから、道路や建物と人の顔は別々の脳の部位または方式で、記憶および認識していると推定される。

tag : 記憶

神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要?

記憶痕跡回路の中に記憶が蓄えられる
-神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要-


概要:
マウスを小箱Bに入れて恐怖体験(電気刺激)を記憶させ(同時に海馬歯状回における記憶痕跡を標識)、その直後にタンパク質合成阻害剤を投与してシナプス増強が起こらないようにすると、翌日マウスを同じ小箱Bに入れても思い出すことはできずすくまない(恐怖反応を示さない)。
しかし別の小箱Aにマウスを入れて標識した記憶痕跡を人工的に活性化するとすくんだ(恐怖反応を示した)。
これは神経細胞同士のつながりがシナプス増強のプロセスによって強化されなくても、怖い体験の記憶は記憶痕跡細胞群の中に直接、保存されていることを意味している。
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恐怖記憶は扁桃体に貯蔵されるという有力な説がある(LeDouxなど)。また恐怖学習は即時に学習される。
もしこの実験で「タンパク質合成阻害剤」が海馬のみに影響し、扁桃体に影響しないのであれば、扁桃体でシナプス増強がおこった可能性がある。
海馬歯状回の記憶痕跡細胞群を人工的に活性化すると、それが扁桃体初期学習時と同じ状態で扁桃体に伝わり、扁桃体で電気刺激が想起されたのではないかと思う。
おそらく小箱Aでなくても、どこにいても記憶痕跡細胞群を活性化すればすくむのではないかと思う。


tag : 記憶 海馬 扁桃体

記憶を調整する新生ニューロン



今日立ち読みした本の記事から。

 記憶がごちゃ混ぜにならないよう,脳は出来事や状況の特徴を他と区別できる形でコード化して蓄えなければならない。「パターン分離」と呼ばれるこのプロセスのおかげで,私たちは危険な状況と,それによく似てはいるが心配のない状況を区別できている。この能力が欠けている人は不安障害になりやすいだろう。一方,脳で一生を通じて新たなニューロンが生まれている領域が2つ知られており,パターン分離はその1つである海馬の「歯状回」という小さな領域で処理されている。パターン分離にはこれらの新生ニューロンが不可欠なようだ。新生ニューロンを特異的に増強する方法を開発すれば,不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療が可能になるかもしれない。



以前の記事

 パターンセパレーションは、海馬の歯状回で起きるという予測が提起され、歯状回の顆粒細胞特異的にNMDA受容体遺伝子を欠損させたマウスをつくり、文脈恐怖条件付けで文脈の識別ができなかったり、CA3場所細胞の発火特性が差が小さいなどの結果が出てきた。


歯状回顆粒細胞は皮質性入力の微妙な差を広げる作用をし、入力の差がもともと大きければ何もしない。


と書いたが、これと同様の文脈であろう。
また別の記事

脳で新しいニューロンが作られるのは、胎児のときだけと思われていたが、1990年代に、成体の脳の海馬(とくに歯状回)で新たなニューロンが生まれることが確認された。ヒトでは現時点で、その数は不明であるが、ラットの海馬では毎日5000~1万個が新生しているそうである。ラットの研究では運動をするとその発生率が高まるらしい。しかしその多くは、発生から数週間もたたないうちに姿を消す。

新生したニューロンを死に至らせずに済むには、如何にすればよいのか。答えは「学習」。しかし、ただ単に学習すれば良いというのもでもなく、ある程度の負荷のある学習でないとニューロンは生き残れない。さらに飲み込みの早い個体よりも、学習成立まで時間のかかった個体のほうが、ニューロンの生存率が高いそうである。


と書いたが、新生ニューロンは記憶・学習においてパターンセパレーションという機構として大きく関わっているようである。

関連記事:
パターンセパレーションとパターンコンプリーション
新生ニューロンと学習

tag : 歯状回 新生ニューロン パターンセパレーション

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Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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