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人工知能とは

人工知能学会誌(2013年7月)に京都大学名誉教授の長尾眞先生が、レクチャーシリーズ「人工知能とは」[第4回]に寄稿された。
これからの人工知能は脳の働きを参照することによって新しい課題や方向性が見えてくるのではないか」という立場に立ち、批判を覚悟で自身に対する一問一答形式で書かれている。

以下その抜粋(Aの後の詳しい解説は省略)である。さらに私なりの回答をAn'として書いてみた。

Q1 人工知能とは

A1 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである。


A1' 結果の予測はほぼ不可能なプログラムであるが、その結果は一見合理的と思える出力を出すもの。さらに結果および周囲の反応から、自己修正ができるプログラム。


Q2 認識とは

A2 類似性を検出する脳内機能であり、受け取った情報を記憶構造の中での整合的な場所に位置づけることである。


A2' (感覚)入力のデータと記憶(生得的ものを含めて)を照合し、あるパターンに対して反応(ニューロンの持続的励起)すること。


Q3 同一性、類似性、抽象化とは

A3 あることがらを記憶しているニューロンネットワーク群が同一あるいは類似の情報によって活性レベルが上がることである。


A3' 対象と記憶を、パターンコンプリーションおよびパターンセパレーションにより、同一、類似または別のものであることを認識する。抽象化とは外界には存在しない(花という花はない)ものを記号化して操作するためのもの。


Q4 知識とは

A4 類似の情報が近くに局在するように記憶され、これら全体が抽象化された状態のもとにまとめられたもの、また関係をもつ知識がつながっている構造である。


A4' 多くのデータを格納しても知識とは呼べない。格納(記憶)したデータを必要に応じて取り出すことができてはじめて知識と呼べる。その際文脈に応じて不足情報を補いまたは推論し、取り出すこともできなければならない。


Q5 考えるとは

A5 ある情報からある結果を推論することである。


A5' 意識および無意識の流れ。志向性を持ったものから単なる連想もある。


Q6 判断とは

A6 外界から得た情報を認識し、推論し、行動に移していく段階に進むことである。


A6' 結果を予測し、なんらかの行動を決めること。


Q7 学習とは

A7 外界から得られる情報を認識知識化し知識を増やすこと、またその認識過程や、判断を経て行われる行動過程をより確実なものにするプロセスである。


A7' 意識的な(無意識の場合もある)記憶保持の過程。


Q8 行動とは

A8 認識した結果から推論過程を経て目的が設定され、それを実現するために小脳を通じて体に指令を送ることである。


A8' 効果器(手足口など体のすべて)を動かすこと。基本的に自己保存や報酬(快感)に向けた動きをする。


Q9 発見、創造とは

A9 推論プロセスにおいて、それまで気の付かなかった結果を得ることである。


A9' 獲得済みのプリミティブな知識や行動から組み立てられた、新しい一連の組み合わせのことで、そのうち有用と周囲に認められたものが発見や創造と呼ばれる。


Q10 知識を持っているとは

A10 Q2からQ9までに述べた機能全体が整合的に働く状態である。


A10' 知識を永続的に保持している状態。ただし新知識によってダイナミックに更新または破棄される場合もある。


Q11 脳幹の働きとは

A11 これまで述べてきた機能(Q2~Q10)を含め、脳の各部位が行う機能を感情その他の因子によって制御することである。


A11' 生命維持に必須の中枢神経系。


Q12 感情とは

A12 脳幹(特に大脳辺縁系)からの指令で出る化学物質の種類と程度によって大脳が制御され、ある種の状態になること、これによってある感情に対応する思考が生じる。


A12' 無意識の生得的情動反応が、意識的な反応と連合したもの。


Q13 意識とは

A13 複数のレベルがあるが、最も興味のあるのは自己意識であり、自分の大脳が働いているということを自分の大脳が認識しているリカーシブな状態である。


A13' 意識と無意識に分けた場合の意識は、自身でそれをはっきりと自覚できる感覚や認識のこと。またその連続。すべての感覚や認識を自覚できてしまうと脳(特に前頭前野)は処理しきれないので、重要なイベントのみ自覚できる。その際ニューロンは一定時間以上(数百ミリ)の励起を必要とする。


Q14 コンピュータソフトウェアになく生体に特有のものは

A14 曖昧さ、揺らぎ、意志である。


A14' 自己保存、種の保存の志向性。どちらも増えることを志向している。


Q15 とは

A15 他人から見たときの大脳の活動の時間的経過を包括的に指す文学的表現である。


A15' 意識無意識の総体。


Q16 ロボットは人を理解できるか

A16 人とのインタラクションにおいて、人が満足する状態をつくり出すことができれば、ロボットが理解してくれていると思う。


A16’人と同じレベルで理解することはできない。イヌやネコが人を理解するように、ロボットはロボットなりの理解はできる可能性はある。


Q17 コンピュータにとってなぜ自然言語は難しいか

A17 自然言語はさまざまな曖昧さが含まれていてコンピュータが適切な判断をすることが難しい。


A17' 自然言語の理解には、記号接地問題を解決する必要がある。その記号接地はマルチモーダルな記憶となる。記号(シンボル)だけの世界では自然言語を理解できない。


Q18 コンピュータは言語の文法や意味を学習できるか

A18 その目的のプログラムをつくり、膨大な言語データを与えれば不可能ではないだろう。


A18' 発話は行動であり、文法はその行動の系列学習によって獲得される。言語の意味は、記号接地問題が解決されなければ真の学習はできない。この2つの学習メカニズムはどちらも記憶のメカニズムを基盤に成り立っている。記憶のメカニズムが作れれば、これらの問題の解決する可能性がある。

tag : 人工知能自然言語意識認識知識学習

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sai

Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。方向音痴、左右盲、脳動静脈奇形、還暦プログラマー。大学院でアルバイト中。

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