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情動研究における恐怖条件づけ



「エモーショナル・ブレイン」から

情動研究における恐怖条件づけの利点

恐怖は他の情動(驚き、興味、喜び、怒り、嫌気、恥辱、苦悶、悲しみなど)と比べ、下記の点で情動研究の利点を持つと考えられる。

1) 恐怖条件づけには、反応(すくみ、自律神経や内分泌系の励起、痛みの抑制、反射の強化など)を学習することは必要としない。ラットは、条件づけ以前には反応しなかった音に対して、条件づけ以後は反応してすくんでしまうが、条件づけがすくみ方を教えているのではない。すくみは、危険にさらされたラットの生得的行動である。
2) 恐怖条件づけは、新たな環境に対応できるように、進化の過程で獲得した能力の扉を開いて、危険を予告する新たな刺激がきたときに、すぐに危険に反応して確かに役に立つとわかっているやり方を自在に使えるようにする。
3) 条件づけによって恐怖学習は直ちに成立する。一組の条件刺激-無条件刺激(CS-US)の組み合わせでも学習しうる。野生動物には試行錯誤を行って学習する機会はない。
4) 恐怖条件づけの形成は、早いばかりでなく長く続く。実際、一度条件づけされた恐怖は忘れ去られることはほとんどない。

恐怖条件づけにおける脳のメカニズム研究の利点

恐怖について脳のメカニズムを研究する際に用いる手段として、恐怖条件づけを価値のあるものとしている重要な側面の一つは、恐怖反応は特定の刺激と組み合わせられるということである。

1) ひとたび刺激が恐怖学習として確立されてしまえば、それは刺激が起こるたびに恐怖反応の表出につながる。
2) 条件刺激にかかわる既知の感覚系の構成の上に立って、われわれは情動過程の回路を構築し始めることができる(既に特定できている入出力の回路を使用できる)。
3) 条件刺激は脳の最小限のエネルギーで処理されるごく単純な感覚刺激であるので、恐怖の研究に際して多くの認知機能の山(例えば生まれて一度もネコを見たことがないラットでもネコに恐怖を覚える生得的な経路など、現在は臭いがその原因であることが分かっている)を避けて通ることができる。

恐怖の条件づけは、恐怖行動を研究する上で必ずしも唯一の方法というわけではなく、また、「恐怖」という言葉によって関連付けられるすべての現象の有効なモデルというわけではない。にもかかわらず、恐怖の条件づけは強力で、汎用性の高い恐怖行動のモデルであり、脳の経路をたどるときにたいへん有効に用いられている。恐怖条件づけは、恐怖についてのわれわれが知る必要のあることのすべてを明らかにするわけではないが、その出発点としてはすぐれた方法である。

・恐怖条件づけの回路へのアプローチ

(無条件刺激ではなく)恐怖条件づけされた音の条件刺激から恐怖反応への回路を特定するために著者らは以下のようなアプローチを行った。

1) 音とショックで恐怖条件づけを行う。
2) 聴覚皮質に障害を与えても、すくみや血圧の反応の条件づけには何の影響も起こらなかったが、聴覚視床以前を障害すると、恐怖条件づけは完全に妨げられた。

 耳→脳幹の聴覚核(蝸牛核など)→下丘→聴覚視床(内側膝状体)→聴覚皮質

3) トレーサー(追跡指標物質)を聴覚視床へ注入し、聴覚皮質以外に投射される4つの皮質下領域を特定。
4) 4つの領域と聴覚視床との結合をそれぞれ除去したところ、扁桃体で恐怖条件づけが起こらなくなった。
5) トレーサーを扁桃体外側核中心核に注入し、逆向きトレースしたところ、外側核に視床からの線維が達していることがわかった。
6) 外側核を障害すると、恐怖条件づけが妨げられた。
7) 中心核を障害しても、恐怖条件づけが妨げられることは以前から知られていたが、中心核外側核からの直接、または扁桃体の基底核、副基底核経由の投射があり、中心核が反応調節系の窓口となる領域と考えられる。

 聴覚視床→扁桃の外側核→(基底核、副基底核)→中心核→情動反応

・聴覚皮質の役割

聴覚皮質を傷害を与えても、恐怖条件づけは妨げられなかったが、恐怖条件づけに対して聴覚皮質が何の役割も果たしていないわけではない。

1) 2種類の似た音を与え、1つはショックと組になり、もう1つは関係がないことをウサギに学ばせる。
2) 聴覚皮質が障害されると、両方の音(ショックと関係のない音にも)に情動反応を示した。
3) 視床扁桃体路(低位経路)と皮質扁桃体路(高位経路)は、ともに扁桃体外側核で終わっている。

 低位経路:情動刺激→感覚視床  →   扁桃体→情動反応
 高位経路:情動刺激→感覚視床→感覚皮質→扁桃体→情動反応

多分これらの二つの神経路は、条件づけられた恐怖刺激の感覚処理過程を統一し調和的に働かせる上で中核的な働きを担っていると思われる同じ外側核に信号を送っている(上記の実験は高位経路が、恐怖反応の抑制に関わっていると考えられる)。

・状況設定(海馬)による恐怖条件づけ

海馬も恐怖条件づけに対して一定の役割を持っている。

1) ラットを箱に入れて、音を鳴らしたときに小さなショックを何度か与えると、音に対して条件づけされるが、箱に対しても条件づけされる。
2) ラットは箱に入れられたとき、音が鳴らなくても、条件づけされた恐怖反応を起こす。
3) 海馬を損傷したラットは、条件づけされた箱にはほとんど反応しなかった。
4) しかし、音を聞くとすぐに、すくんでしまった。

つまり、海馬に損傷を与えたとき、音刺激によってつくられた(箱への)恐怖反応は選択的に除かれてしまった。
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テーマ : 意識・認識・認識論
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 情動研究 恐怖条件づけ 扁桃体 外側核 中心核

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宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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