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行為を促す意図



「マインド・タイム」から

リベットの仮説:
自発的な活動に結びつく特定の脳活動が、行為を促す意志の前(約350ミリ秒)に始まっている。

実験方法:
・実際に活性化される筋肉にあらかじめ記録電極を装着しておく(筋電図)。
自発的な行為のたびに毎回発生する準備電位RPを記録するために、適切な電極を頭に装着しておく。
・被験者は、自由で自発的な行為として、単純だが急激な手首の屈曲運動を、やりたいときにいつでも行ってよいと指示する。
・また、被験者はいつ行動するかあらかじめ考えずに、むしろ行為が「ひとりでに」現れるがままにさせるように指示する。
・2.56秒で一周する時計を見てもらい、自分の動きを促す意図や願望への最初のアウェアネス(W)を、「時計針(実際は光の点)の位置」と結びつけて覚えるように指示する。
・被験者が時計をどれだけ正確に使っているかを検証するために、微弱な皮膚刺激を手に与え、皮膚感覚があったとき(S)の「時計針の位置」も別途報告してもらう。

結果:
・報告されたS時点は、実際に刺激が与えられた時点よりも約マイナス50ミリ秒(つまり、早い)であることが確認された。
RPの始動の平均は、筋肉の活性化するよりも550ミリ秒前であった(実際の脳内でのプロセスの起動は、私たちが記録したRP(補足運動野が発信源と考えられる)よりも先に始まっている。その未知の領域にあるRPが、大脳皮質の補足運動野を活性化するものと考えられる)。
・行動を起こそうとする願望への最初のアウェアネスの時点を示すW値は、実験を平均するとマイナス200ミリ秒であった(この時間はS(皮膚刺激)実験で見出されたマイナス50ミリ秒の報告エラーを引いて、マイナス150ミリ秒と訂正できる)。
RPの始動から350(=550-200)~400(=550-150)ミリ秒程度あとに行為を促す衝動または願望に意識的に気づく

 RP(-550ms)⇒W(-200ms)⇒S(-50ms)⇒筋肉の活動(0ms)

リベットの考察:
自発的な行為に繋がるプロセスは、行為を促す意識を伴った意志が現れるずっと前に脳で無意識に起動する。
もし自由意志というものがあるとしても、自由意志が自発的な行為を起動しているもではないことを意味している。
・意識的な意志(W)は、脳活動(RP)の始動より最低でも400ミリ秒遅れて後に続くとはいうものの、運動活動の150ミリ秒前には現れる。意識的な意志にもし役割があるということなら、自発的な行為の生成プロセスの最終成果に影響を与えたり、制御したりする可能性がある
・「今、動こう」とするプロセスが少しでも現れる前に、意識を伴いながら思考し計画することによって行為の選択を検討するという脳の性質は、まだ解明されていない。

関連記事:
タイム-オン(持続時間)理論
意識を伴う感覚的なアウェアネスに生じる遅延
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テーマ : 意識・認識・認識論
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 準備電位RP自由意志ベンジャミン・リベットアウェアネス

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sai

Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。方向音痴、左右盲、脳動静脈奇形、還暦プログラマー。大学院でアルバイト中。

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