幻肢痛と神経回路の「つなぎ換え」

末梢神経損傷後に生じる脳の中の神経回路の「つなぎ換え」機構を解明

交通事故などにより手足を切断した患者(年間5000人)の50~80%は、失った手足があたかも存在するように感じ、激しく痛む病態「幻肢痛」に悩まされます。


幻肢痛というと「Dr.コトー診療所」でも取り上げられていたが、そんなに高い割合とは知らなかった。

・・・マウスの髭の感覚神経を完全切断して、髭の入力を失った視床のニューロンでの神経回路の変化を詳細に解析しました。・・・視床のニューロンに入力している内側毛帯線維のみを選別して、その入力本数と感覚情報の受け渡し方(情報伝達様式)を詳細に解析しました。実験の結果から、通常の視床のニューロンは1本の内側毛帯線維から入力を受けますが、切断した動物では、予想よりはるかに早く切断後6日目には新たな複数本の線維から入力を受けるようになり、視床の神経回路の配線が早期から大きく「つなぎ換え」られることが分かりました。損傷前に存在していた神経配線は損傷後1週間以内に弱くなり、それを補うように新たな内側毛帯線維が視床のニューロンにシナプスを形成することも分かりました。さらに、新しくできたシナプスには、発達期でのみ観察されるGluA2という神経伝達物質受容体が発現しており、「若い」性質を持つことも分かりました。感覚情報の伝え方も、成体に比べて時間的に遅い性質を持つことが分かりました。

・・・近年、損傷早期にスパインなどのニューロンの微細構造レベルで変化することが報告されていましたが、神経回路のレベルにおいても大規模な配線換えが、今までの学説を覆しはるかに早い時期に起きていることが今回の研究ではじめて明らかになりました。



 これまでの仮説では、幻肢痛に関して神経回路自体が換わるのには数年かかると考えられてきましたが、今回の結果から、損傷後わずか1週間以内にまもなく新しい配線ができはじめ、つなぎ換えが始まることが明らかになりました。成体の脳内でこのような早さで神経回路が変化するという発見は、これまでの学説を覆すものです。この変化がいつまで続くのか現時点では明らかではありませんが、神経回路の変化が終わって安定してしまった後に、治療によって再度正常な状態に戻すことはやはり難しいと考えられます。現在、国内では幻肢痛のリハビリ治療は積極的に行われてはおらず、治療実施施設はごくわずかしかありません。治療自体も、幻肢痛が発症し、患者の訴えが強くなってから行われていました。しかし、この結果を踏まえると、できるだけ早期、幻肢痛の発症以前から、発症そのものの抑制を目的とした治療を開始することが望ましいと考えられます。











幻肢痛の治療といえば、右の本でラマチャンドランが解説しているミラーボックスが有名だが、この実験により治療の時期や方法は見直されることだろう。
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tag : 幻肢痛 GluA2 ラマチャンドラン

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宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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