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人におけるシンボルグラウンディング

シンボルグラウンディングは、人においてもそのメカニズムは不明なことが多い。
今井むつみ著「ことばの学習のパラソックス」からその難しさを確認してみたい。


クワインの謎

未知の言語を話す現地人が、うさぎを指して「ガヴァガーイ」という発話をしたとき、それが「ウサギ」なのか「ウサギの色」なのか「ニンジンを食べているウサギ」なのか「切り離すことのできないウサギの体の一部」なのか、それを聞いた言語学者は確定することはできないと、哲学者のクワインはことばの指示対象を確定する際の論理的な難しさを指摘している。
子どもがことばを学習していく過程も同様の難しさがある。


外延と内包

「ことばの意味」には「外延」と「内包」の2つの重要な側面がある。
「外延」とは、指示対象の集まりで、狭義の「カテゴリー」と同義である。
「内包」とは、カテゴリーにどのような属性があり、それがお互いにどのような関係にあるのか、カテゴリーにとってどの程度の重要性があるのか、などについての知識であり、構造化された内的表象と考える。狭義の概念である。

ほとんどのことばは、ひとつの事例を限定して指示するものではなく、「カテゴリー」を指示するものである。未知のことばを聞いたとき、そのことばの指示対象をその状況化で正しく同定するのみならず、新たな事例に拡張できなければならない。しかしことばを拡張するためには、その基準となる「内包」の表象が必要なはずである。

ことばの指示対象となる事例をたったひとつ知っているだけで、子どもは内包を持ちえるのだろうか?あるいは外延を決定する基準である内包なしで、子どもは外延を決定できるのであろうか?

子どもがことばを学習する際、クワインの言語学者のように論理的可能性を吟味することはせず、即時マッピング(シンボルグラウンディング)を行う。それを可能にするメカニズムとして近年主流となっているのが「制約」という考え方である。


概念的制約と存在論的カテゴリー

「概念的制約」とは、人は概念についての「素朴理論」を持っており、これが「制約」となって、あり得ない可能性を最初から排除しているというものである。概念的制約は、「存在論的カテゴリー」を持つと仮定している。 存在論的カテゴリーの例を以下に示す。

すべての概念的存在
-物理的に実在する存在
--自然物
---生物
----動物
----植物
---非生物
----固いもの(ダイヤモンド)
----液体、形がないもの(水、砂)
--人工物
---個別性のあるもの(車、机)
---個別性のないもの(プラスチック、ヘアジェル)
-出来事
--意図的(けんか)
--非意図的
---自然におこる(地球の自転、台風)
---人工的に作りだされる(電気の回路)
-抽象的概念
--感情的(愛、恐怖)
--知的精神的(思考、記憶)

存在論的カテゴリーの実在性は以下の2つの基準により妥当化されるという。

(1) それぞれの存在論的カテゴリーに属する存在は他と区別される独自の制約によって行動や属性を規定される。
(2) どのような物理的操作も、ある存在論的カテゴリーに属する存在に変えることはできない。

最近の認知発達心理学のめざましい発展により、乳幼児がそれぞれの存在論的カテゴリー特徴づける「概念的制約」のすべてとまではいわなくても、骨格となる重要な部分の知識を教えられずして持っていることが明らかになってきた。


言語領域特有の制約

子どもは知識が全くゼロの状態からことばの学習に臨むわけではない、として概念的制約という仮説を上げたが、子どもが初めに覚えることばは、存在論的区分(動物、物質など)よりもずっと詳細に分割された(犬=ワンワン、車=ブーブーなど)概念である。
子どもがこのように詳細に分割された概念に対応づけるためには、概念的制約に加え、ことばがどのように概念に対応するかについての知識が制約として必要になる。
以下が制約理論の代表的なものである。

制約名内容
事物全体バイアス子どもは未知の名詞が物体全体の名前であり、その部分や属性(色、素材、触感など)を指示することばではないと想定する。
事物カテゴリーバイアス子どもは未知の名詞が個人や個体に特有な固有名詞ではなく、カテゴリーの名前だと想定する。この場合のカテゴリーとは分類学的体系に従ったカテゴリーである。
形状類似バイアス知覚類似性、その中でも形状次元での類似性が未知の物体のラベルの外延を決定するもっとも重要な基準。
相互排他バイアス子どもは、ひとつの事物にはひとつしかラベルがないと想定する。名前を知っている物体と未知の物体があり、未知のことばを聞くと、未知の物体を指すと解釈する。
未知の事物が状況の中にない場合、既に知っているの名前と重複しない指示対象(事物の部分、色あるいは物質の名前など)を探す。
事物全体・カテゴリーバイアスと相補的な関係にあり、適用範囲が具体的な事物、物体に限られている。
コントラスト原理子どもは、ことばには完全に意味が重複する同義語というものはないという信念を持っており、未知のことばの意味を推論する際に、概念の中でまだラベルづけされていない場所、心的語彙辞書のなかの空白な場所を探す。
具体的な事物に限らず、あらよる概念とことばの対応すけの際に適用される。

これらのバイアスによって、子どもはことばを効率的に獲得しているようである。
これらのバイアスの存在を確認する実験の詳細は、下記を参照されたい。




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tag : クワイン 外延 内包 概念的制約 存在論的カテゴリー 事物全体バイアス 事物カテゴリーバイアス 形状類似バイアス 相互排他バイアス

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Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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