単一ニューロン主義の問題点



「脳の情報表現―ニューロン・ネットワーク・数理モデル」
--- 14 多細胞同時記録実験の必要性とその実際 --- から

単一ニューロン主義とは、情報を表現する単位が個々のニューロンという意味である。

しかしながらこの単一ニューロン主義はかなり無理がある。まず個々のニューロン活動は、多かれ少なかれ不安定かつ不規則である。また絶え間ない自発発火のため、情報に対応して活動を増大させてもS/N比はよくない。また以下の問題もよく指摘される。

1) 単一ニューロンの発火は、次のニューロンの細胞膜にきわめて小さな変化しか起こしえず、単独ではほぼ無力である。
2) 実験場面で恣意的に選んだ事象の中でさえ、1つのニューロンがそれらのうちの複数に応答することも多い。
3) ある特定の機能に関わる脳領域が壊れた際、他の部位がその機能を代行することがある(ニューロンの機能変化による代償)。

また実験事実に基づかなくとも、以下の問題点は容易に思いつく。

1) 情報の組み合わせは新たな情報を生み、それは無数に作られるが、有限な個々のニューロンでこのほぼ無限な情報に対応できるのか(組合せ爆発の問題)。
2) 情報間の連合、分離、類似度、構造化などを、個々のニューロンで十分に表現できるのか。
3) 多数のニューロンが毎日死滅しているにもかかわらず、脳内の情報が次々と死滅していかないのはなぜか。

これらのことから、何らかのニューロン集団が協調的に働くことにより情報を表現するという、集団的・協調的符号化をどうしても考えざるをえない。ただしここでの集団という言葉は、個々のニューロンが無個性で均質であり集団となってはじめて意味をもつ、ということではない。ニューロンが個性的であるということはすでにわかっている。それら個性の協調が情報を表現するということである。つまり、単一ニューロンの個性を生かしながら、少数の局所集団から膨大な大集団までのどこをも含みうる、連続性のある動的な回路を、脳内情報を表現する基本的単位と考えるべきである。



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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 単一ニューロン主義

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宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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