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神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要?

記憶痕跡回路の中に記憶が蓄えられる
-神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要-


概要:
マウスを小箱Bに入れて恐怖体験(電気刺激)を記憶させ(同時に海馬歯状回における記憶痕跡を標識)、その直後にタンパク質合成阻害剤を投与してシナプス増強が起こらないようにすると、翌日マウスを同じ小箱Bに入れても思い出すことはできずすくまない(恐怖反応を示さない)。
しかし別の小箱Aにマウスを入れて標識した記憶痕跡を人工的に活性化するとすくんだ(恐怖反応を示した)。
これは神経細胞同士のつながりがシナプス増強のプロセスによって強化されなくても、怖い体験の記憶は記憶痕跡細胞群の中に直接、保存されていることを意味している。
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恐怖記憶は扁桃体に貯蔵されるという有力な説がある(LeDouxなど)。また恐怖学習は即時に学習される。
もしこの実験で「タンパク質合成阻害剤」が海馬のみに影響し、扁桃体に影響しないのであれば、扁桃体でシナプス増強がおこった可能性がある。
海馬歯状回の記憶痕跡細胞群を人工的に活性化すると、それが扁桃体初期学習時と同じ状態で扁桃体に伝わり、扁桃体で電気刺激が想起されたのではないかと思う。
おそらく小箱Aでなくても、どこにいても記憶痕跡細胞群を活性化すればすくむのではないかと思う。


tag : 記憶 海馬 扁桃体

記憶を調整する新生ニューロン



今日立ち読みした本の記事から。

 記憶がごちゃ混ぜにならないよう,脳は出来事や状況の特徴を他と区別できる形でコード化して蓄えなければならない。「パターン分離」と呼ばれるこのプロセスのおかげで,私たちは危険な状況と,それによく似てはいるが心配のない状況を区別できている。この能力が欠けている人は不安障害になりやすいだろう。一方,脳で一生を通じて新たなニューロンが生まれている領域が2つ知られており,パターン分離はその1つである海馬の「歯状回」という小さな領域で処理されている。パターン分離にはこれらの新生ニューロンが不可欠なようだ。新生ニューロンを特異的に増強する方法を開発すれば,不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療が可能になるかもしれない。



以前の記事

 パターンセパレーションは、海馬の歯状回で起きるという予測が提起され、歯状回の顆粒細胞特異的にNMDA受容体遺伝子を欠損させたマウスをつくり、文脈恐怖条件付けで文脈の識別ができなかったり、CA3場所細胞の発火特性が差が小さいなどの結果が出てきた。


歯状回顆粒細胞は皮質性入力の微妙な差を広げる作用をし、入力の差がもともと大きければ何もしない。


と書いたが、これと同様の文脈であろう。
また別の記事

脳で新しいニューロンが作られるのは、胎児のときだけと思われていたが、1990年代に、成体の脳の海馬(とくに歯状回)で新たなニューロンが生まれることが確認された。ヒトでは現時点で、その数は不明であるが、ラットの海馬では毎日5000~1万個が新生しているそうである。ラットの研究では運動をするとその発生率が高まるらしい。しかしその多くは、発生から数週間もたたないうちに姿を消す。

新生したニューロンを死に至らせずに済むには、如何にすればよいのか。答えは「学習」。しかし、ただ単に学習すれば良いというのもでもなく、ある程度の負荷のある学習でないとニューロンは生き残れない。さらに飲み込みの早い個体よりも、学習成立まで時間のかかった個体のほうが、ニューロンの生存率が高いそうである。


と書いたが、新生ニューロンは記憶・学習においてパターンセパレーションという機構として大きく関わっているようである。

関連記事:
パターンセパレーションとパターンコンプリーション
新生ニューロンと学習

tag : 歯状回 新生ニューロン パターンセパレーション

CA2は小さな環境変化を認識

記憶中枢「海馬」の小領域CA2の機能が明らかに

まず、マウスをある環境に慣れさせ、その後、全く違う環境とほんの少しだけ違う環境に移動した際に活動する海馬の神経細胞を、細胞イメージング技術を用いて観察しました。神経細胞が活動すると発現する遺伝子(Arc遺伝子とH1a遺伝子)を蛍光染色により、検出した結果、CA1、CA2、CA3、それぞれの神経細胞の可視化に成功しました。これにより、マウスがほんの少しだけ違う環境(いくつかの新しい物を置いただけの環境)に移動したときに、活動する神経細胞のパターンがCA2だけ完全に変わってしまうことが分かりました。これは、海馬全体は大きな環境の変化は認識できるものの、小さな環境の変化は認識できず、小さな環境変化を認識する役割はCA2が担っていることを示しています。

また、CA2の神経細胞の活動を阻害した遺伝子改変マウスは、正常なマウスに比べ新しい環境に移動してもその環境を探索しないことも分かりました。

これらの結果から、CA2は記憶の形成とその更新に重要な役割を持つことが分かりました。



パターンセパレーションとパターンコンプリーション

 歯状回顆粒細胞は皮質性入力の微妙な差を広げる作用をし、入力の差がもともと大きければ何もしない。他方CA3細胞は皮質性入力の微妙な差にはパターンコンプリーションしたかのように反応せず、より大きな差のある入力には新たな場所細胞を動因するglobal remappingの手法でパターンセパレーションを起こした。すなわち歯状回とCA3のパターンセパレーションはそのメカニズムが異なることが提唱された。



と記したが、CA2にもパターンセパレーションの機能があり、歯状回やCA3のメカニズムとも異なるようである。

関連記事:
海馬CA2
パターンセパレーションとパターンコンプリーション

tag : CA2 パターンセパレーション

海馬CA2

100年ぶりに脳の主要な記憶神経回路の定説を書き換え
-海馬に新たな記憶神経回路を発見、記憶形成の謎解明へ大きく前進-


これまで何十年間も信じられていた「歯状回はCA2に入力しない」という定説を覆し、「歯状回が直接シナプスを介してCA2に入力している」ことを発見しました。また、CA2は、CA1の深い細胞層の興奮性細胞群に優先的に入力していることが明らかになりました。以上のことから、海馬において、従来型のトライシナプス性の記憶神経回路「嗅内皮質→DG→CA3→CA1」に加えて、新しいトライシナプス性の記憶神経回路「嗅内皮質→DG→CA2→CA1deep」を発見しました。従来型のトライシナプス性の記憶神経回路は海馬内で主にラメラ断面に沿って情報伝達しているのに対して、新しいトライシナプス性の記憶神経回路は複数のラメラ断面を縦断して情報伝達していることも明らかになりました。


CA2に関する生理学的発見の次は、記憶や学習にどのようなかかわりを持つかなどの機能的な発見を期待します。

関連記事:
回想性想起と親近性想起
エピソード記憶と意味記憶
海馬の宣言的記憶仮説
歯状回の顆粒細胞
海馬の作業記憶仮説
海馬の認知地図仮説
パターンセパレーションとパターンコンプリーション
海馬CA3と記憶の想起
海馬CA1と記憶の獲得
新生ニューロンと学習

tag : 海馬 CA2

視覚性対連合記憶

視覚性対連合記憶課題を用いて、下記の発見がなされた。

脳内の外界情報データベースが作られる仕組みを解明
—従来の定説を覆す発見—


まず視覚には、第一次視覚野から始まる結合連鎖が頭頂葉に至る背側視覚経路と、側頭葉下部に至る腹側視覚経路がある。

左右の頭頂連合野を破壊したサルは、一般に物体間の位置関係に関する空間課題が困難になり、左右の下側側頭葉皮質を破壊したサルは、物体視覚像の弁別または記憶を必要とする課題が困難になる。

腹側視覚経路は、第一次視覚野 → V2野 → V4野 → TEO野 → TE野である。TE野は腹側視覚経路の最終段階で、TE野からは嗅周野(35野、36野)、前頭前野、扁桃体、大脳基底核の線条体など、視覚系の外の多くの脳部位への線維投射がある。

嗅周野は様々な高次感覚連合野から知覚情報を受け取るが、サルではTE野からの視覚入力が多くを占める。嗅周野はTE野からの視覚入力以外に、海馬傍皮質内のTF野や上側頭溝背側部といった複数の感覚モダリティーを処理する領域からの入力も受け取る。嗅周野が受け取った感覚情報が嗅内野を介して海馬に供給される一方で、海馬や嗅内野からの信号が逆行性に嗅周野に伝達される。

TE野の細胞の多くは上記資料の図2のような中程度に複雑な図形特徴を抽出して反応する。

嗅周野は連合記憶に関係し、異なるオブジェクト間での関連付けや、オブジェクトと報酬情報の間の関連付けに寄与することが知られている。例えば2つの任意の視覚図形(仮に図形AとB)をペアとして学習を行うと、対符号化細胞と呼ばれる図形の組み合わせを表現する(図形Aと図形Bの両方に選択的な反応を示す)ニューロン群が嗅周野に多数出現する。

下部側頭葉は、隣接した2つの領野、低次側のTE野と高次側の36野から成りますが(図2A)、TE野の多くのニューロンがそれぞれ個々の図形を表象しているのに対して、36野には図形間対連合を表象するニューロンが数多く存在することが報告されてきました。


物体の視覚特徴の表象様式は大脳皮質の内部表現の中でも最もよく調べられていますが、個々のニューロンの活動計測に基づいた従来の見解では、ある領野における視覚特徴の神経表象は、その領野内で生成されてその領野における支配的な神経表象になると考えられてきました。


というこれまでの定説に対して、

まず低次領野において神経表象のプロトタイプ、すなわち「前駆コード」が少数生成され、それが高次領野に送られ、そこで多くのニューロンに広まる、すなわち「増殖」する、という「前駆コード生成→増殖仮説」も立てられます。この仮説では、大脳皮質の階層的に異なる複数領野にまたがった情報処理によって神経表象が形成される点で、従来の説とは異なった計算原理を提唱することになります。


低次側の領野であるTE野には、個々の図形を表象するニューロンから図形間対連合を表象するニューロンへと情報を送る神経回路が数多く存在することがわかりました(図5、図6左)。これは、対連合表象の「前駆コード生成」過程を表していると考えられます(図2C左上)。一方、高次側の領野である36野では、そのような神経回路は見られず(図6右)、代わりに、図形間対連合を表象するニューロン同士が結合し、情報を送る側のニューロンが先に対連合表象を示し、情報を受け取る側のニューロン集団がやや遅れて相互結合を強める過程と並行して対連合表象を示すようになることがわかりました(図7)。これは、対連合表象の「増殖」過程を表していると示唆されます(図2C右上)。以上の結果から、視覚特徴の表象は、従来の見解とは異なり、その表象が支配的である領野よりも低次の領野において少数の「前駆コード」が生成され、それが高次領野における「増殖」過程を経ることによって、支配的な神経表象となることが示されました。


という定説とは異なった説を裏付ける実験結果が得られたと上記の資料は説明している。
今後、低次の領野において少数の「前駆コード」の生成や、高次領野における「増殖」のメカニズムが判明すれば、記憶(特に意味記憶)の解明に一歩近づけるのではないだろうか。

tag : TE野 嗅周野 36野 視覚性対連合記憶課題

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Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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