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常識を如何に実装すべきか

ミンスキー氏、最近の人工知能研究を批判 2003年5月15日

 「水は濡れている」や「火は熱い」といった概念は、人工知能の研究者たちにとって扱いにくい分野だとされている。これについてミンスキー氏は、完全自律型の考える機械を作るという壮大な挑戦を投げ出しているとして、研究者たちを非難した。


 残念なことに、1980年代の人工知能の研究者たちにとって最も一般的だった方法は行き詰まったと、ミンスキー氏は言う。法律や医薬などの厳密に定義された分野で専門的知識を蓄積した、いわゆる「エキスパートシステム」は、ユーザーからの問い合わせに対して適当な診断や書類、抜粋などを引き出すことができたが、一方で、ほとんどの子どもが3歳までに理解するような概念すら学習できなかった。

 「エキスパートシステムで種類の異なる問題を扱うには、システムを最初から作り直さなければならなかった。常識が蓄積できなかったからだ」とミンスキー氏は述べた。

 ミンスキー氏が、総合的常識の推論システムの構築という壮大なプロジェクトに取り組む唯一の研究者として挙げたのが、ダグラス・レナート氏だ。レナート氏は『サイク・プロジェクト』で、常識のベースとして100万以上のルールの詳細な入力を指揮している。



とミンスキー氏は「常識が蓄積できなかった」ことが、人工知能が未だ成功していない原因に挙げている。
そして有望な研究として『サイク・プロジェクト』をあげているが、

人間並みの人工知能をみんなで育てよう(上) 2000年9月 5日
人間並みの人工知能をみんなで育てよう(下) 2000年9月 6日

マッキンストリー氏は、膨大な数のマインドピクセルを蓄えれば、ジャックは人間の思考を模倣できるようになると考えている。そのためにジャックはいったいいくつのマインドピクセルを必要とするか、マッキンストリー氏にもはっきりとはわからないが、おそらく1億以上だろうと推測している。

この人工知能理論は――全く信じられないとは言わないまでも――空想的だと思う人のために、マッキンストリー氏は、それを説明する簡単な方法があると述べる。マッキンストリー氏はこの人工知能理論を、コンピューターの世界で毎日使われている、データ圧縮というプロセスに喩えるのだ。

大きな音楽ファイルをMP3などのフォーマットで小さく圧縮し、それを復元する際には、近似と推論が用いられる。コンピューターはファイル内にあるデータを調べ、必要なものを取り出し、データを関係づけることによって残りを推論で導き出す。

マッキンストリー氏は、数億個のマインドピクセルは、人間の精神をコンピューター的に「圧縮」したものと見なせると考えている。そうすれば、ちょうどMP3プレーヤーが、欠けているデータを近似的に推定することで圧縮ファイルを復元して音を再生するように、ジャックも、思考するよう命じられたときには、必要なマインドピクセルを「補充」することによって人間の思考に近いものを導き出せるだろうというのだ。

もちろんそのプロセスは、この説明よりもはるかに複雑だ。

「理論は確立されているし、技術もしっかりしている――あとは時間の問題だけだ」とマッキンストリー氏は述べる。

だが、長期にわたって人工知能プロジェクト『サイク』(Cyc)を進めているダグ・レナート氏は、マインドピクセル・プロジェクトに懐疑的な目を向ける。

レナート氏は、ジャックを詳しく検討したことはないとしながらも、この世界には1ビットの「真か偽か」の命題があまりに多くありすぎ、ある程度たくさん集めたところで意味のあるものにはならないと語る。

レナート氏は、「『空は赤くない』という命題まで入れておかなければならないのだろうか」と問い返し、ジャックは、そのデータベースの中に「青」以外のすべての色について「偽」とする命題を保存しておかなければならないだろうと示唆する――これは間違いなく、膨大な数になる。

「例えば小学校4年生の子どもが宿題をするのに必要な真偽問題に限ってみても、それらをすべて蓄積しておくには、この宇宙の原子の数では足りないということに、マッキンストリー氏は気づくことになると思う」とレナート氏。

だがマッキンストリー氏はこの意見に反論し、ある程度十分な数のマインドピクセルが与えられれば、ジャックは「もし空の色が青ならば、それ以外の色ではない」と推論できるようになると言う。

マッキンストリー氏はさらに、サイクが採用している知識の蓄積法は非常に非効率的だと批判する。サイクは、知識の専門家を集め、「アブラハム・リンカーンがゲティスバーグにいたのなら、彼の足もそこにあった」式の、常識的な命題を入力させるやり方をとっている。



ミンスキー氏も、マッキンストリー氏のマインドピクセル・プロジェクトも、レナート氏のサイク・プロジェクトも、真か偽かの命題(それだけではないかもしれないが)を外部から知識を組み込む方式で人間の思考の模倣の実現を目指しているが、それ(だけ)で知能や常識が備わるとは私には思えない。

またマッカーシー氏も外部から知識を組み込む方式をさらに進歩させたいと考えているように思える。

人工知能の第一人者J・マッカーシー氏に聞く--AI研究、半世紀の歴史を振り返る 2006年7月13日

--次に目指す大きな目標は何ですか。

 コンテクストを考慮した常識と推論の定式化をさらに進歩させていきたいですね。これは私が長年に渡って取り組んできたテーマであり、私以外にも取り組んでいる人が何人かいます。この研究はDARPAも支援しているのですが、アイデアが不足していて人間の知能に到達するレベルには至っていません。



しかし常識は外部から組み込むものではなく、主体に獲得させるものではないか。
では如何に獲得させるのか。脳の記憶のメカニズムを参考にしたい。

たとえば「同じ」などという概念は、外部から組み込むのは、そもそも無理ではないだろうか。
「AとBは同じ」という知識を外部から組み込んでも「AとCは同じ」かどうかはわからない。
Aの特徴とB(またはC)の特徴が一致している(あるいは共通点が多い)かどうかを判別する操作と、その結果の認識が「同じ」という概念であり(「同じ」という概念には比較操作や認識も含まれる)、その概念を理解するには、その概念の操作や認識を主体に獲得させるしか方法はなく、主体の外部に存在するもので説明(組み込み)できるとは思えない。
これを実現するには脳の記憶のメカニズムだけでは足りない。ワーキングメモリのデータ操作のメカニズムが必要だ。
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tag : 常識 ミンスキー マッカーシー CYC

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宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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