スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

海馬シナプスでのLTP/LTD



「脳の情報表現―ニューロン・ネットワーク・数理モデル」
--- 10 シナプスにおける情報処理 --- から

海馬に損傷を受けた患者では順行性健忘症という形で記憶障害がでることが臨床の現場で報告されており、海馬が記憶に何らかの関係をもっていることが示唆されてきた。"シナプス説"に従えば、シナプス部位の機能変化が海馬における学習・記憶の実体であるということになるが、この説では筆者(深井朋樹)らが実際に観察している、海馬CA1領域のLTPおよびLTDについて紹介する。
海馬CA1領域のLTPはearly phase LTP(E-LTP)とlate phase LTP(L-LTP)に分けられる。E-LTPは単一の高頻度刺激によって誘発されるもので、遺伝子発現や蛋白質合成を必要としない変化(可逆的)、一方L-LTPは3回以上の繰り返しの高頻度しより誘発され、遺伝子発現や蛋白質合成を必要とする量的な変化(不可逆的)である。E-LTPとL-LTPはそれぞれ"短期記憶(数時間から数日の記憶)"と"長期記憶(一生の記憶)"モデルの候補にあげられ、その妥当性が発現機序の実体の解析を通じて検討されてきた。
・・・
1Hz程度の電気刺激はLTDを誘導するが、同時にLTPの消失も引き起こせる。さらにLTP誘導と消失は繰り返し起こすことができることも知られている。これらの結果はLTPとLTDはお互いに相補的で可逆的なプロセスにより誘導されうることを示唆するものである。



関連記事:
回想性想起と親近性想起
エピソード記憶と意味記憶
海馬の宣言的記憶仮説
歯状回の顆粒細胞
海馬の作業記憶仮説
海馬の認知地図仮説
スポンサーサイト

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 海馬 シナプス LTP LTD 短期記憶 長期記憶

視覚系の未解決の問題



「脳の情報表現―ニューロン・ネットワーク・数理モデル」
--- 4 視覚における脳内表現 --- から

1)情報変換の問題

低次の領野(例えばV1)の細胞はローカルで単純な特徴によく反応し、高次の領野(例えば下側頭皮質)では複雑なパターンによく反応する。それではその中間でどのような過程を経て、高次領野のパターン選択性が生じるのか。あるいはMTでは比較的限局した視覚領域の一様な方向の動きが検出されて、その次のMSTの細胞は大きな受容野をもち複雑なオプティカルフローに選択性をもっている。しかしMTとMSTの間ではどのようなメカニズムが働いてそのような変化が生じるのか、ということは何もわかっていない。

2)受容野の概念の変容と文脈依存性

視覚野ニューロンの活動は受容野から離れた場所の刺激からさまざまな影響を受ける。例えば受容野の周辺に受容野内と同じような刺激があると抑制が生じ、受容野内部と周辺との対比が重要であるということは以前から知られていた。最近注目されていることは、周辺からの影響が周辺刺激の構造についての複雑な情報に基づいているのではないかということである。受容野内の刺激が同じでも、ニューロンの活動がシーンの中での文脈によって変化するという意味で、文脈依存的修飾という言葉がよく使われている。例えばV1ニューロンの活動が、受容野が刺激中の図に位置するか地に位置するかによって変化するというのがその例である。

3)情報統合の問題

並列階層的な構成をもつ視覚経路で別々の場所で取り出された情報はどのように統合されて、整合性のある1つのシーンとして知覚されるのか。
例えば位置情報処理には頭頂連合野が関わっていて、物体の情報の処理には下側頭皮質が関わっているとすると、位置の情報と物体の情報を統合して、ある場所にある物体があるということを認知する仕組みはどのようになっているのだろうか。1つの可能性はそうした別々の情報が収束する場所があるのではないかということである。前頭前野には下側頭皮質からも頭頂連合野からも入力が収束していることが解剖学的に示されている。実際に場所と図形の両方に選択的に活動するニューロンが前頭前野で見いだされている。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 視覚 脳内表現

ギャップ結合とシナプス結合の共存



「脳の計算論(シリーズ脳科学 1) 」
--- 第3章 リズム活動と位相応答 --- から

ニューロンの結合様式としては、今まで議論してきた化学シナプス以外の結合として「ギャップ結合」がある。これは、細胞と細胞の接触部位(多くは樹状突起)で小孔を通して細胞間の連絡を行うチャネルで、コネキシン6分子から構成されるコネクソンが実体である。小孔であるので、電位は拡散的に相互作用(すなわち、両者の電位が同じになろうとする効果)を行う。ギャップ結合自体は無脊椎動物や下等な脊椎動物で多く見つかっており、高等動物の高次の神経系などではあまり報告が無かった。しかし、近年大脳皮質の抑制性ニューロン間に広く存在することがわかり、その機能的役割に注目が集まっている。

高次の神経系に見つかっているギャップ結合の特徴として次のような興味深い事実が判明している。まず、興奮性ニューロン間や、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンとの間にギャップ結合はほとんどみられず、同種の抑制性ニューロン間に存在する。抑制性ニューロンの種類はかなり多様であるが、典型的な抑制性ニューロンとして、その活動電位の特徴などから分類されているfast spiking(FS)ニューロンやlow threshold spiking(LTS)ニューロンがある。抑制性ニューロン間でもFSとLTS細胞はそれぞれのグループ内でギャップ結合シナプス結合の両者を介して、それぞれが別の回路網を構成しているとの報告がある。いずれにしても、このような抑制ニューロンのネットワークは、表舞台が興奮性ニューロンの活動パターンであるとすれば、その舞台を支えている裏方のような役割を果たしていると考えられ、今も精力的に研究が進められている。



関連記事:
スパイク時間依存のシナプス可塑性(STDP)

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : ギャップ結合 シナプス結合 抑制性ニューロン

スパイク時間依存のシナプス可塑性(STDP)



「脳の計算論(シリーズ脳科学 1) 」
--- 第2章 ニューロンとシナプスの数学的モデル --- から

Hebbは1950年代に、そのような複雑な神経ネットワークにおける学習原理を一般的に考察し、シナプス可塑性について論理的に明快な考え方を示した。リカレントネットワークのように、あるニューロンの出力が回路内を反響して再び自分に影響するようなネットワーク(神経活動に相互関連がるようなネットワーク)では、回路の出力パターンを変化させるために、あるニューロンの出力をどのように変化させればよいかを明らかにすることは容易ではない。そこでHebbはシナプス前ニューロンの発火がシナプス後ニューロンの発火に貢献している場合、そのシナプスの荷重を強めることを提案した。この考えは今ヘブ則と呼ばれるが、弱めることも必要であった点を除けば、ヘブ則はほぼ正しいことが現在証明されている。

ヘブ学習について最近の発展を挙げるならば、シナプス学習則がスパイク時間に依存していることの発見だろう。ヘブ学習の工学的応用では、シナプス前後のニューロン活動として平均値が想定されてきたが、これはシナプス荷重の変化が、ニューロン活動の発火活動に比べてゆっくり進むと考えられてきたからである。しかし今日では、入力と出力のスパイク時間が関与するミリ秒レベルの精緻な規則が知られている。たとえば大脳皮質の興奮性ニューロン間のシナプスでは、EPSPが誘発される時間t'とシナプス後細胞が発火する時間tの差を⊿t=t-t'とすると、⊿t>0の場合にはLTPが誘導され、⊿t<0の場合にはLTDが誘導される。このようなシナプス可塑性スパイク時間依存シナプス可塑性STDP)と呼ばれ、ミリ秒レベルでのシナプス前入力とシナプス後ニューロンの出力の因果関係を、シナプス荷重と関連付けた。現在ではさまざまな脳の領域やニューロンのタイプについて、LTPLTDの強度と⊿tの関係が調べられている。


関連記事:
行動の機構――脳メカニズムから心理学へ

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : スパイク時間依存 シナプス可塑性 STDP ヘブ則 LTP LTD

適応的運動学習と連続的運動学習



「学習と脳―器用さを獲得する脳」
--- 3 器用さの学習のメカニズム―ヒトでの研究でわかったこと --- から


適応的運動学習

適応学習では、感覚情報から運動への座標変換過程をさまざまに変化させて、それを適応するように学習する。視覚情報と到達運動の組み合わせが多いが、力の負荷を与えたりする場合もある。視覚も、シフトプリズムのように、左右に変位する場合もあれば、回転や速度の変化に適応する課題もある。

中枢神経系は身体の状態、感覚、運動にもとづいて、変換過程の内部モデルを用いて出力を計算すると考えられる。このような環境に合わせた内部モデルの変更を運動学習ととらえる。感覚運動変化における内部モデルには、順モデルと逆モデルがある。



連続的運動学習

連続運動の課題は、指定されたボタンを連続的に押す課題がある。この場合には、連続的な空間的な運動になる。空間的な連続運動以外にも、非空間的に異なる動作を順序に行う課題もある。最初に順序を覚えて行う場合と、試行錯誤で次第に見つける課題もある。

連続的運動課題ではその次の刺激が予測できるようになると、反応時間が短くなると考えられる。連続的運動課題において予測できるということは、これも順序動作に関する広い意味では内部モデルの形成とみなすこともできる。この際に獲得されるのは、学習に用いた運動順序、または順序の一部がまとまってチャンキング化(動作のグループ化)したものと考えられる。さらには、その動作順序を作り出す規則やカテゴリという抽象的なレベルの知識もあり階層的にとらえられる。




・手続き化の過程

最初は注意の必要な運動で、意識の介在が重要な宣言的知識、ないし明示的知識として学習を開始しても、練習とともに自動化が進み、次第に意識の努力を必要としなくなる。このように、練習とともに最初明示的知識であっても後に暗黙的知識に移行する過程を手続き化の過程と呼ぶ。



・再記述化の過程

発達の研究者には、最初は暗黙的知識として身につけるが、次第にその過程が明示的に意識して制御されるようになり、最終的には明示的知識として再記述される過程の存在を想定している。このような過程は手続き的知識、ないしは暗黙的知識の表象の再記述化の過程と呼ぶ。




・学習段階と関連する脳の部位

学習早期の段階では、連続的運動学習適応的運動学習のどちらも、大脳皮質の高次連合野、そして大脳皮質基底核系大脳皮質小脳系、さらに海馬などの広範囲の関連する脳の部位を巻き込みながら学習が進む。
学習が進むにつれて、次第に小脳と基底核の役割は分かれてくると考えられる。小脳系が運動の適応学習の固定化にとってきわめて重要であるのに対して、基底核系が運動の連続学習の固定化で重要な役割を果たすと考えられる。
さらに、基底核と小脳のシステムの中でも関与する部位の変化が学習初期と後期では異なることが報告されている。



関連記事:
系列運動の学習における視覚座標と身体座標
(系列運動学習とはこの記事の連続的運動学習と同じ)

テーマ : 意識・認識・認識論
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 適応的運動学習 連続的運動学習 大脳皮質 基底核系 小脳系

新着図書情報

2017年8月発売

2017年4月発売

2016年11月発売

2015年10月発売
にほんブログ村
にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ
広告
最新記事
お勧めの本
カテゴリ
カレンダー
06 | 2011/07 | 08
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
プロフィール

sai

Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

リンク
RSSリンクの表示
最新トラックバック
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。