スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コンピュータと人間の記憶の違い

記憶の過程の分類で、コンピュータと人間の(宣言的)記憶の違いを纏めてみた。

記憶の過程コンピュータ人間
記銘
(符号化)
・正確に記銘される
・音声や画像はサンプリングして記銘される
・音声や画像は圧縮される場合もある
・正確に記銘されない
・特徴を抽出して記銘される
・他の記憶と関連付けて記銘される
保持
(貯蔵)
・変化しない・関連する他の記憶の記銘とともに変化する
・長期間想起されないと忘却されることがある
想起
(検索)
・正確な手がかりがないと想起できない
・間違うことはない
・曖昧な手がかりでも想起できる
・間違うことがある

記銘時に他の記憶と関連付けされるということは、記銘される記憶Aを手がかりとして、関連付けされる記憶Bが想起されているということである。
保持の間、記憶Aは新たな記憶Cの記銘とともに変化するため、正確に想起できるとは限らない。
心理学的に記銘、保持、想起という過程に分類されているが、すべての過程で記銘と想起が同時に遂行されている。

記銘と想起が一体化した記憶のアルゴリズムの開発が、「人工知能の課題」克服への第一歩になるのではないだろうか。

スポンサーサイト

tag : 記憶 記銘 保持 想起

幻肢痛と神経回路の「つなぎ換え」

末梢神経損傷後に生じる脳の中の神経回路の「つなぎ換え」機構を解明

交通事故などにより手足を切断した患者(年間5000人)の50~80%は、失った手足があたかも存在するように感じ、激しく痛む病態「幻肢痛」に悩まされます。


幻肢痛というと「Dr.コトー診療所」でも取り上げられていたが、そんなに高い割合とは知らなかった。

・・・マウスの髭の感覚神経を完全切断して、髭の入力を失った視床のニューロンでの神経回路の変化を詳細に解析しました。・・・視床のニューロンに入力している内側毛帯線維のみを選別して、その入力本数と感覚情報の受け渡し方(情報伝達様式)を詳細に解析しました。実験の結果から、通常の視床のニューロンは1本の内側毛帯線維から入力を受けますが、切断した動物では、予想よりはるかに早く切断後6日目には新たな複数本の線維から入力を受けるようになり、視床の神経回路の配線が早期から大きく「つなぎ換え」られることが分かりました。損傷前に存在していた神経配線は損傷後1週間以内に弱くなり、それを補うように新たな内側毛帯線維が視床のニューロンにシナプスを形成することも分かりました。さらに、新しくできたシナプスには、発達期でのみ観察されるGluA2という神経伝達物質受容体が発現しており、「若い」性質を持つことも分かりました。感覚情報の伝え方も、成体に比べて時間的に遅い性質を持つことが分かりました。

・・・近年、損傷早期にスパインなどのニューロンの微細構造レベルで変化することが報告されていましたが、神経回路のレベルにおいても大規模な配線換えが、今までの学説を覆しはるかに早い時期に起きていることが今回の研究ではじめて明らかになりました。



 これまでの仮説では、幻肢痛に関して神経回路自体が換わるのには数年かかると考えられてきましたが、今回の結果から、損傷後わずか1週間以内にまもなく新しい配線ができはじめ、つなぎ換えが始まることが明らかになりました。成体の脳内でこのような早さで神経回路が変化するという発見は、これまでの学説を覆すものです。この変化がいつまで続くのか現時点では明らかではありませんが、神経回路の変化が終わって安定してしまった後に、治療によって再度正常な状態に戻すことはやはり難しいと考えられます。現在、国内では幻肢痛のリハビリ治療は積極的に行われてはおらず、治療実施施設はごくわずかしかありません。治療自体も、幻肢痛が発症し、患者の訴えが強くなってから行われていました。しかし、この結果を踏まえると、できるだけ早期、幻肢痛の発症以前から、発症そのものの抑制を目的とした治療を開始することが望ましいと考えられます。











幻肢痛の治療といえば、右の本でラマチャンドランが解説しているミラーボックスが有名だが、この実験により治療の時期や方法は見直されることだろう。

tag : 幻肢痛 GluA2 ラマチャンドラン

漢字が書けなくなった

 漢字を読むことには不自由しないが、書けなくなって久しい。「読む」という行為は毎日行っているが、「書く」という行為は滅多になしい(パソコンでの入力行為は含めない)。「書く」という行為を行わないと、その記憶が薄れていくのだろう。

 つまり「読む」「書く」という行為に使われる記憶は別々にあるのだろう。たとえば人の顔を正確に認識できても、その人の顔を書くことは出来ない(出来る人もいるが)のと同じと思われる。

 「読む」ときに使われる記憶は、他と区別が出来る程度に曖昧なものと思う。たとえば10円玉と100円玉は簡単に区別できるが、正確に「書く」ことは出来ない。区別するために必要な特徴までは記憶されるが、それ以上は(無意識だが)積極的に捨てられている可能性がある。「読む」ときに使われる記憶は、記憶の分類で言えば、宣言的記憶の意味記憶に保存されるのであろう。

 一方「書く」ときに使われる記憶は、手続き記憶であろう。自転車の乗り方や水泳と同じである。しかし「書く」という行為は「読む」あるいは「聞く」「話す」という行為と密接に関連(連想)があり、他の手続き記憶とは違う。また自転車の乗り方は一度覚えると忘れないが、「書く」ほうはそうでもないようだ。ただし漢字は多すぎるので比較できないかもしれない。

 簡単な漢字であれば、「読む」という行為の記憶をワーキングメモリにとどめ、それを元に手続き記憶に頼らなくても書くことは可能であろうが、複雑な漢字(例えば「薔薇」など)は、ワーキングメモリに呼び出された記憶は10円玉のように曖昧で、「書く」ことはできないであろう。やはり漢字の書き取り練習は必要と思われる。

 「話す」という行為も基本的には「書く」と同じく手続き記憶と思われる。昔同僚の中国人から聞いた話だが、親戚に朝鮮族の人がいて、その人の話を理解することはできるが、自分は話すことが出来ないと言っていた。「話す」という行為を行ったことがないからだろう。外国語の習得にはこのあたりの記憶の違いを考慮して、学習指導すれば効率的になるのではないだろうか。
 

tag : 漢字 記憶

Arcたんぱく質と逆シナプスタグ方式

神経細胞の情報伝達効率を調節する新たな分子メカニズムを発見

記憶長期増強LTP)によって形成されると考えられている。

 私たちは、日常で起こった出来事や学習によって得られた知識を、長い間覚えておくことができます。このような長期的な記憶は、脳の神経細胞同士の情報伝達の場であるシナプスの性質が長期的に変化することにより形成・保持されていると考えられています。例えば、あるシナプスに高頻度で入力が起こった後に、そのシナプスにおいて長期的に伝達効率が上昇する現象(長期増強)が知られています。このような長期的なシナプスの性質変化は、長期シナプス可塑性と呼ばれます。神経細胞が状態を変化させる性質を持っていることが、それまでは記憶していなかった事柄を新しく記憶することを可能にするのです。これまでの研究により、シナプスの長期変化には、神経細胞の細胞体で新規遺伝子の発現が必要なことが明らかになっています。



シナプス活動によって引き起こされた新規遺伝子の発現により、Arcたんぱく質が合成され、活動性の低いシナプスへ運ばれ集積されている。

 本研究グループは、ラット脳から取り出して培養した細胞(初代神経培養細胞)や遺伝子改変マウスを材料にして、生化学的手法や蛍光ライブイメージング、大脳組織染色法などの多様な手法を組み合わせて解析を行いました。シナプス活動によって引き起こされた新規遺伝子の発現により、Arcと呼ばれるたんぱく質が合成されることはすでに知られていましたが、そのArcたんぱく質が細胞体からシナプスへ至る動態を世界で初めて解析しました。その結果、Arcたんぱく質は従来考えられていたように活動性の高いシナプスへ選択的に集積されるのではなく、逆に活動性の低いシナプスへ運ばれ集積されていることが明らかになりました



この集積により、活動性の低いシナプスでは、シナプス増強などを防ぐことができる。

 つまり、増強されたシナプスはArcたんぱく質の影響を受けずに強化されたままで残り、一方、活動性の低いシナプスでは意図しないシナプス増強などを防ぐことができます。このようにシナプス間でメリハリをつけて、特定の記憶だけが長期記憶となることが分かりました。



これまで知られていたシナプスタグ方式とは逆のメカニズムによって長期記憶の形成を調節している。

 これまで、脳の長期記憶に関するメカニズムとして、シナプスタグ方式が知られていました。これは、長期的に情報を蓄えるべきシナプスを情報とは関係のないシナプスから見分けるための標識(タグ)が存在し、このタグがあるシナプスにだけ情報保持に必要なたんぱく質が集められていくという説です。今回は、シナプスタグ方式とは逆に情報を伝える必要のないシナプスにArcたんぱく質が集まることから、シナプスタグとは別の性質を持つタグ、すなわち「逆シナプスタグ」が存在すると考えられます。脳ではこのような巧妙な分子メカニズムによって選択的に長期記憶の形成が調節されていると考えられます。



 Arcたんぱく質の不活性シナプスへの選択的集積は、これまで全く知られていなかった新しい動態制御の仕組みであり、シナプスタグ方式と合わせて、今後、記憶・学習の分子メカニズムを解明する上で基本的な概念となるものと思われます。


 

 1つの神経細胞には数千から数万のシナプスが存在していると言われているが、そのうちのどのシナプスが神経細胞の活動電位に貢献してるかがわからなければ、正しい記憶の形成はできない。
 シナプスタグ方式は、ルドゥーの「シナプスが人格をつくる」で知ったが、逆シナプスタグ方式もあるとは。まだほかにもあるかも知れない。LTPは奥が深い。

tag : Arcたんぱく質 逆シナプスタグ 長期増強 LTP 記憶

新着図書情報

2017年8月発売

2017年4月発売

2016年11月発売

2015年10月発売
にほんブログ村
にほんブログ村 科学ブログ 脳科学へ
広告
最新記事
お勧めの本
カテゴリ
カレンダー
04 | 2012/05 | 06
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

sai

Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

リンク
RSSリンクの表示
最新トラックバック
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。