記憶を調整する新生ニューロン
今日立ち読みした本の記事から。
記憶がごちゃ混ぜにならないよう,脳は出来事や状況の特徴を他と区別できる形でコード化して蓄えなければならない。「パターン分離」と呼ばれるこのプロセスのおかげで,私たちは危険な状況と,それによく似てはいるが心配のない状況を区別できている。この能力が欠けている人は不安障害になりやすいだろう。一方,脳で一生を通じて新たなニューロンが生まれている領域が2つ知られており,パターン分離はその1つである海馬の「歯状回」という小さな領域で処理されている。パターン分離にはこれらの新生ニューロンが不可欠なようだ。新生ニューロンを特異的に増強する方法を開発すれば,不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療が可能になるかもしれない。
以前の記事で
パターンセパレーションは、海馬の歯状回で起きるという予測が提起され、歯状回の顆粒細胞特異的にNMDA受容体遺伝子を欠損させたマウスをつくり、文脈恐怖条件付けで文脈の識別ができなかったり、CA3場所細胞の発火特性が差が小さいなどの結果が出てきた。
歯状回顆粒細胞は皮質性入力の微妙な差を広げる作用をし、入力の差がもともと大きければ何もしない。
と書いたが、これと同様の文脈であろう。
また別の記事で
脳で新しいニューロンが作られるのは、胎児のときだけと思われていたが、1990年代に、成体の脳の海馬(とくに歯状回)で新たなニューロンが生まれることが確認された。ヒトでは現時点で、その数は不明であるが、ラットの海馬では毎日5000~1万個が新生しているそうである。ラットの研究では運動をするとその発生率が高まるらしい。しかしその多くは、発生から数週間もたたないうちに姿を消す。
新生したニューロンを死に至らせずに済むには、如何にすればよいのか。答えは「学習」。しかし、ただ単に学習すれば良いというのもでもなく、ある程度の負荷のある学習でないとニューロンは生き残れない。さらに飲み込みの早い個体よりも、学習成立まで時間のかかった個体のほうが、ニューロンの生存率が高いそうである。
と書いたが、新生ニューロンは記憶・学習においてパターンセパレーションという機構として大きく関わっているようである。
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tag : 歯状回新生ニューロンパターンセパレーション