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自己を組み立てる7つの原理



シナプス人格をつくる」
最終章「あなたは何者なのか」からの抜粋


原理1 さまざまなシステムが同じ世界を経験する

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個体の観点から見ると、また個体が相互作用している世界から見ると、その光景や音や匂いは別べつの経験ではなく、一つの経験の異なる側面だ。また、それぞれのシステムは可塑的であり、学習し情報を貯えることができるが、同じ経験について学習し、情報を貯えているのだ。一つの国の違う町に住む人たちはお互いに顔を合わせることはなくとも同じ文化を共有している。同じような環境的影響のもとにあるからだ。同様に脳の中でも、同じような環境条件のもとにあるさまざまな脳システムの間に、共有の文化のようなものが発達する。
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原理2 同期性がパラレルな可塑性をコーディネートする

実際の脳の神経ネットワークは孤立していない。シナプス伝達によってほかの神経ネットワークとコミュニケートする。たとえばリンゴが丸っこくて赤っぽいしみではなくリンゴとして見えるためには、異なる視覚サブシステムに処理される、刺激についてのさまざまな情報が統合される必要がある。これがどのように起こるかの解釈を「結びつけ問題」と呼ぶ。人気の高い解決策は、ニューロンの同期性という概念にもとづく。
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原理3 パラレルな可塑性は調節システムによってもコーディネートされる

さまざまな脳領域でのパラレルな処理は、さらに調節物質によってコーディネートされる。新しい刺激、予期しない刺激、あるいは苦痛をもたらす刺激、またはほかの意味で情動喚起の引き金となる意味のある刺激があるとき、脳のいたるところで調節物質が分泌される。
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調節物質のおもな仕事はニューロン間の神経伝達を制御することだ。調節物質は多くのシナプスで放出されるが、けっしてそのすべての場所で作用するわけではない。調節物質が神経伝達調節の仕事をするのは、おもに、調節物質が到着したときにすでに活動していたシナプスである。
調節システムは大きな意味のある経験の際に活性化されるので、調節物質は広範な神経システムの中で、とくにそのような経験についての情報をさかんに処理しているシナプスでの伝達を選択的に促進することができる。私たちは情動的な経験やほかの意味で重要な経験について記憶を形成しやすい。
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調節物質について非常に重要なことの一つは、いったん分泌されると長く作用することだ。少なくともグルタミン酸やGABAのような伝達物質にくらべると作用時間が長い。グルタミン酸やGABAの一次的な作用はミリ秒単位の短時間のうちに終わるのがふつうだ。それに対して調節物質の効果は秒単位の長さのあいだつづく。すべての脳のシステムが同じ速度で働くわけでないので、調節物質は作用時間が長いおかげで、一つのエピソードのあいだに最も早く起こるいちばん単純なプロセスから、最後に生じるいちばん複雑なプロセスまでの広範なプロセスに影響を与え、学習を促進する。この学習の促進は一つの経験を構成するいろいろな局面のあいだに引き出されるどの情報についても起こる。
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原理4 収束ゾーンはパラレルな可塑性を統合する

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パラレルな学習が、自己を組み立てる複雑なプロセスの重要な部分であることにはまちがいないが、パラレルな学習それ自体だけでは、一人の人間の一貫した人格をつくりあげるには不十分だ。
とくにヒトとその他の霊長類における自己組み立てのもうひとつの重要なメカニズムは収束ゾーンの存在だ。
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多くの種類の動物で調節物質と同時発火が、複数の独立した学習システムに同時に学習をさせる。しかし限られた種類の動物だけが皮質に収束ゾーンをもつ。
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システム間で収束が起こる前に、システムの中で収束が起こる。
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収束がシステムで完了すると、システムにまたがる収束がはじまる。1970年代、ジョーンズとパウエルが記念碑的な論文を発表した。その研究で彼らはサルの皮質において、二つまたはそれ以上の感覚システムの最終処理段階から収束的な入力を受ける領域を数個特定した。特定された収束ゾーンは皮質後頭頂領域、海馬周囲領域、皮質前頭前野の小領域などだった。これらの領域がさまざまな種類の情報を収束できるということは、これらの領域が脳の最も高度な認知機能にかかわっている理由を説明している。既述のように前頭前野の領域は、思考・計画・意思決定の根底にあるワーキングメモリー機能にかかわっている。後頭頂領域はヒト以外の霊長類で、空間内での動きの認知的制御に重要な役割を果たしており、ヒトでは左半球では言語理解、右半球では空間認知に決定的にかかわっている。皮質内嗅野は側頭葉内側部記憶システムの一部だ。これらの領域は皮質感覚野と海馬との間に重要なリンクを確立し、それによって海馬に、長期明示記憶をうちたてる課程で外界の刺激どうしの関係を形成するのに必要な材料を提供する。海馬も収束ゾーンである。ただし、さまざまな感覚システムからの入力を統合するのではなく、ほかの収束ゾーンからの入力を受ける。海馬はいわば超収束ゾーンである。
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この仕組みがもたらす重要な結果の一つは、意味のある経験をすると、記憶は内示的に機能するシステムによっても明示的に機能するシステムによってもつくられるが、これらの記憶はある程度コーディネートされることだ。つまりある経験について意識的に想起できる要素がしばしば、それとは別に、ほかのシステムに内示的に貯えられていた要素の一部と重なる。側頭葉内側部の収束ゾーンのような収束ゾーンは、ほかのシステムに内示的にコード化されている要素を統合し、なおかつ意識的にアクセスできる記憶の創造を可能にする。しかし、側頭葉内側部システムが意識的にアクセスできるようなしかたで記憶を形成するとはいっても、それらの記憶が意識にのぼるのは、それらがワーキングメモリに置かれたときだということに留意してほしい。いったんワーキングメモリにはいると、記憶や考えは処理階層の下位の活動に影響を及ぼす。
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原理5 下向きに動く考えはパラレルな可塑性をコーディネートする

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シナプスで可塑性を誘発するのに必要なのは、適切な種類のシナプス活動だけである。もし感覚的な出来事を処理する細胞が、それらの出来事が感覚システムで誘発する活動の結果として可塑性を得るとしたら、考えを処理する細胞が、自分がコミュニケートする相手の細胞の接続を変えることができない理由はない。ただ、これが実際にどのように起こるのかもっとくわしく知ることが必要だ。
思考が下向きに動けることは、神経システムのパラレルな可塑性をコーディネートする強力な手段を提供する。ある生物種に存在する収束ゾーンが精巧であるほど、その種の認知能力は緻密になり、情報収束によって可塑性をコーディネートする能力が高度になる。考えというものにそのような能力があると想定してはじめて、私たちの自分自身に対する見かたが、自分のあり方やこれからの自己に多大な影響を及ぼす仕組みが見えてくる。人のイメージは、自己を無限に作り直していくのだ。

原理6 情動状態は脳の資源を独占する

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脅威刺激があるとき、扁桃体は神経接続を通して、皮質の感覚野に直接フィードバックを送り、外界の刺激の危険な側面に注意を集中するようにしむける。扁桃体のフィードバックは思考と明示的記憶の形成を受け持つほかの皮質領域にも達し、現在の状況について考え、記憶を形成するようにしむける。さらに扁桃体は覚醒ネットーワークにも情報を送り、脳のいたるところで調節物質を分泌するようにしむける。外界を処理したり、外界について考えたり、記憶を形成したり、扁桃体のフィードバックを受けたり、忙しく活動しているシナプスは調節物質によって強化される。さらに、それらのシナプスで可塑性が促進される。異なる領域やシステムで活動している細胞が同時に発火すると、可塑性が誘導されて、それらの細胞の間の相互接続がリンクされる。同時に扁桃体に制御される身体反応が表出し、脳にさらなるフィードバックを提供する。このフィードバックは、情動反応のうちの「感じられる」反応の一部である身体反応だけでなく、ホルモンの形もとる。ホルモンはシナプス活動にさらに影響を与える。その作用は調節物質の作用以上に長くつづく。上記すべてのことの結果として、情動覚醒は脳に広く浸透し、自己再生産をつづけていく。
・・・
情動状態が覚醒すると、その状態に対して脳の認知資源の多くが駆り出され、一方、ほかの情動システムは活動を休止させられる。その結果、各システムにわたって学習が特別なしかたでコーディネートされ、現在の情動的状況にとって重要な学習しか起こらなくなる。
・・・

原理7 自己の内示的側面と明示的側面には重なりがあるが、完全には重なり合わない

脳のさまざまなシステムを一つの軌道にのせておくのに役立つ抑制と均衡の仕組みは、いろいろあるが、それにもかかわらず、その仕事がつねに完璧に果たされるとはかぎらない。明示的に学習された事柄が、内示システム、とりわけ内示的情動システムが焦点をあてていた事柄とは違う場合もある。扁桃体は皮質から独立して学習できることを思い出していただきたい。そうなっている理由はたくさんあるだろうが、最も明白な理由は、ヒトの脳の進化における現在の段階では、認知システムと情動システムの間の接続が完璧ではないということだ。
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つまるところ、自己は明示的に機能するシステムによって、自分が何者であるか、どのようにふるまうかを意識的に決めようとする。しかし、それは部分的にしかうまくいかない。情動システムがほかのシステムによる学習をコーディネートすることに非常に重要な役割を果たしているのに、情動システムへの私たちの意識的アクセスは不完全だからだ。ただし、重要であるには違いないが、情動システムはつねに活動しているわけではなく、ほかの脳システムが学び貯えることに、ときたまの影響しか及ぼさない。そのうえ、独立した複数の情動システムがあるので、どれか一つの情動システムがときたま影響を与えても、それ自体は情動が自己発達に与える影響全体の一要素にすぎない。

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テーマ : 意識・認識・認識論
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : シナプス 人格 ジョセフ・ルドゥー

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Author:sai
宮城県出身。寅年生まれ。おうし座。B型。左利き。赤緑色盲。たそがれのプログラマー。

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